月着陸船(LM)
月着陸船(LM:Lunar module)、それは人類が初めて開発した、宇宙空間だけを飛行する乗り物です。 空気抵抗を考慮する必要のないこの乗り物は、その使用環境の特殊性がゆえ、 数々のユニークな機能を持った奇怪な形をしています。 そしてその開発には困難を極めました。
LM animation
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高さ:23ft (7.0104m)
最大重量:36244lb (16.454ton)
製造:グラマン(Grumman Aircraft Engineering Corp., Bethpage, N.Y.)

月着陸船(LM:Lunar module)は、当初LEM(Lunar Excursion Module)とも呼ばれていた。 LMは、サターンVブースターの第三段目(S-IVB)の上部、 SLA(Spacecraft-LM Adapter)の中に格納されて宇宙まで運ばれる。 宇宙船が月への軌道に乗ると、CSMの先端にドッキングされて月までの道のりを飛行する。 月軌道上に到着すると、LMには2名の宇宙飛行士が乗り込み、下降段(Descent Stage)のDPS(Descent Propulsion System)エンジンを噴射して月面へ着陸する。 月面での活動が終了すると、LMの下降段を発射台として、上昇段(Ascent Stage)のみが月を回るCSMまで戻る。 飛行士がCSMに戻った後は上昇段も不要となる。上昇段には不要となった機材が詰め込まれ、再び月面に向かって廃棄される。 そして最後にささやかな月震(月の地震)を起こして科学者に月の組成を調べる機会を与え、その役目を終わる。

LM Ascent Stage 上昇段(Ascent Stage)
上昇段は、大きく3つの部分に分けることができる。 1つは前面の円筒形の部分、「クルーコンパートメント(Crew Compartment)」、 2つめは中央部、ドッキングハッチを持つ「ミッドセクション(Mid Section)」、 そして最後に後部につきだした「後部機材隔室(Aft Equipment Bay)」である。

LMはその厳しい重量制限から、徹底的な軽量化が図られており、 ほとんどの部分はアルミの骨組みに断熱のための金属箔を張っただけの「ハリボテ」である。
そのなかでクルーコンパートメントとミッドセクションは一体につくられており、 飛行士の乗るキャビンを形作っている。 キャビンの容量は約235立方フィートである。 このキャビンはアルミ合金を削りだし、溶接し、隙間にエポキシを詰めて作られている。 また接合にはチタンパーツが使用されている。 クルーコンパートメントとミッドセクションは、強度維持のため外壁全面にリブが削り出されている。

クルーコンパートメントは直径約92インチ(2.3m)、奥行き約42インチ(1m)で、正面に 二つの三角形の窓と月面へ降りるためのハッチ、内部は左側が船長(CDP)、右側が月着陸船パイロット(LMP)のコンソールである。 また船長側の屋根の部分には、小さなドッキング窓がついている。 CDPの左側とLMPの右側には Equipment Storage がある。 CDP側には環境制御装置やバックパック(PLSS:PORTABLE LIFE SUPPORT SYSTEM)のCO2キャニスター、LMP側にはカメラや食料などが格納されている。 床にはベルクロパイルが張られており、無重力状況下で宇宙飛行士の靴を固定することができる。 宇宙空間および月面でしか運用されないため、操縦席に椅子はない。飛行士はケーブルで体をくくりつけるだけで、立ったまま操縦する。
LMのコックピット
LM cockpit


正面のハッチは飛行士が月面に降りるために使用するもので、 バックパック(PLSS)を背負ったまま出入りするため、約32インチ四方の四角形となっている。 ヒンジは船内から見て右手についており、LMP側の内側へ開く。 与圧中は気圧によって周りのシリコンがぴったりと密封しており、開くにはハッチについているバルブを操作して 船内の空気を完全に排気する必要がある。

2つの三角窓とドッキング窓は2層になっている。 外層の外側は紫外線などを遮断するため、59層のコーティングがなされている。 また、外層の内側と内層には高効率の反射防止コーティングがなされている。 そして曇り防止の電気ヒーターが備えられているが、温度監視機能はないので、飛行士が常にチェックする必要がある。 すべての窓には遮光板が取り付けられており、使わないときは窓の脇に巻き上げられている。

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APOLLO 3D Screen Saver
2月22日にニューバージョン完成
キャビンの後部は奥行き54インチ、高さ5フィートの楕円形の「ミッドセクション(Mid Section)」である。 ここには、中央に月から飛び立つときに使用する上昇エンジン、 右側には環境制御装置、水供給機、月の石を格納するコンテナ、生命維持装置、 左側には廃棄物処理装置、酸素浄化装置、そして食料や月面シューズなどを格納する各種コンテナが取り付けられている。 そして後部隔壁には電源システム(EPS:Electrical Power Subsystem)、 誘導・ナビゲーションシステム(GN&CS:Guidance, Navigation, and Control Subsystem)が搭載されている。 上昇エンジンは円筒形のカバーで覆われており、飛行士の椅子として使用される。 ミッドセクションの外側には、燃料タンクが取り付けられている。

ミッドセクションの上部には、CSMとのドッキングに使用するオーバーヘッドハッチがある。 これは直径33インチの円形で、その構造は正面ハッチと同様であり、内側に開く。 ハッチの外側、ドッキングトンネルには着脱可能な drogue と呼ばれる傘型のパーツがあり、 これにCSMの probe を差し込んで引き寄せる、するとトンネルの周りに取り付けられた12個の自動ラッチがかかりドッキングする。 ドッキング後はdrogueとprobeは飛行士の手によって取り外され、CMに格納される。

ミッドセクションの後ろは、与圧されていない後部機材隔室(Aft Equipment Bay)である。 ここにはGN&CS,EPS,通信システムなどの電子機器が搭載されており、グリコールによる cold rails で冷却されている。 また2つの気化酸素タンクと2つの気化ヘリウムタンクもここに取り付けられている。

LM Descent Stage 下降段(Descent Stage)
ここには、月を離れるときに不要なすべての機材が取り付けられている。 中央にDPS(Descent Propulsion System)エンジン、それを取り囲むように燃料タンク、そして外側には4本のランディングギアを持つ。

下降段の筐体は8角形の外観をしており、ここに中央と前後左右に合計5つの四角いエリア、その周りに4つの三角形のエリアがある。 中央のセクションにエンジンが搭載されている。 外周の四角いエリアは前部と後部に酸化剤タンク、左右には燃料タンクを搭載する。 またその間にある三角形のエリアを上から見て反時計回りにquad No.1,2,3,4と呼ぶ。

LM設計主任、トム・ケリー著
「Moon Lander」
quad No.1には折り畳み式S-バンドアンテナとバッテリーが搭載されている。 さらにJミッションでは月面車(LRV:Lunar Roving Vehicle)も折り畳んで搭載される。 quad No.2には水タンク、着陸レーダー機器、科学観測機器、原子力発電器が搭載されている。 quad No.3には酸素タンクとヘリウムタンク、月面探査用各種機材が搭載されている。 quad No.4にはバッテリーと、飛行士が月に降り立つ様子を撮影するカメラなどが搭載された、 modularized equipment stowage assembly (MESA)が組み込まれている。 LM leg deployment

正面を除く3つのランディングギアの先端には、長さ5フィートの月面センサー(Lunar Surface Sensing Probe)が取り付けられている。 着陸時、この先端が月面に接触すると、コックピットにある青色の[LUNAR CONTACT]ランプが点灯する。 これは着地直前の、月面からはね返る熱と反動の影響を最小限にくい止めるため、飛行士がエンジンをカットするタイミングを教える。 なお、LM-3(アポロ9号)とLM-4(アポロ10号)では4本すべてのランディングギアに月面センサーが取り付けられていた。

LM全体は、金色、銀色もしくは黒色のシートのようなもので包まれている。 これは耐熱および微小隕石から機体を保護するシートである。 これらはThermal Blanketと呼ばれ、主にアルミニウムまたはインコネルとニッケルのフォイル、そしてマイラーとH-film blanketと呼ばれる特殊なシートを何層にも重ねたものである。 このシートの張り方はミッションによって異なっており、このためLMのカラーリングもミッションごとに微妙に変わることとなった。


LM COLOR CHART




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